メモリーブックとモンテッソーリケア
今回は、私自身の祖母との思い出の香りについて
嬉しいできごとがありましたので、
学習や記憶、脳の構造など、心理学とモンテッソーリケアの視点も取り入れてお伝えしたいと思います。
私は週に一度、祖母にモンテッソーリケアを提供しています。
毎回のサポートで、必ず行うことがあります。
それは、メモリーブックや家系図を使って
自身の家族(祖母にとっては、孫)が会いに来たことをわかってもらうことです。
モンテッソーリケアでは、コミュニケーションツールとしての機能をより強化し、
過去の回想だけではなく、現在、未来へと繋がっている自分をイメージできるように
メモリーブックをお作りすることをお勧めしています。
メモリーブック:ご本人から時系列で聴取した自伝的記憶と現在の生活を、写真やイラストを組み合わせてアルバムにしたものです。
毎回、最初にメモリーブックの読み聞かせを行います。
いくつになっても人は学ぶ
学習心理学では、「学習」を、経験によって生じる比較的持続する行動の変化と定義づけています。
その中でも、モンテッソーリケアでは、
梅干しを見る(条件刺激)だけで唾液がでる(条件反応)
というような、古典的条件付けという学習を行っています。
メモリーブックを読む→自分の家族が来たことがわかる
(条件刺激) → (条件反応)
祖母は、訪問直後は私が誰かわからなくても
メモリーブックのこのページを読み、
この5歳のドレスを着た写真の孫が
ベッドサイドにいる成長した孫と同一人物だとわかると、
目を大きく見開いてびっくり!そして喜んで手をぎゅっと握ってくれます。
これは、毎回メモリーブックを読み聞かせることで、プライミング効果を狙っています。
プライミング効果:言葉や環境といったほんのわずかな影響を受けると、特定の情報を思い出しやすくなる現象です。
プライミング効果は、加齢による影響を受けにくいと言われています。
何度もこの繰り返し提示をすることを
反復プライミングと呼び、刺激が繰り返し提示されたとき、行動反応は改善します。
つまり、喜びの体験の繰り替えしが、孫の顔を覚えておくための記憶の維持に役立ってくれます。
記憶のふしぎ
記憶には、半永久的に保持される長期記憶と
保持時間が数秒~数十分の短期記憶、数秒程度の感覚記憶があります。
長期記憶は、その中でも宣言的(顕在)記憶と非宣言的(潜在)記憶に分かれます。
宣言的記憶は、言葉で言い表せる記憶であり、非宣言的記憶は、言葉で表現することが難しいものです。
認知症では、前者は低下していくものの、後者は比較的保持されます。
宣言的記憶の中でも、個人的な経験に関する情報の記憶をエピソード記憶と呼びます。
エピソード記憶は加齢の影響を受け低下しやすいのですが、思い出す際に手がかりがあると上手く思い出すことができます。
加えて、人の経験には、感情が伴い、そのため個人の経験するエピソード記憶は感情と一緒に記憶される傾向が強くなります。
これを気分一致効果と呼び、思い出す時にあのときの気分や感情と一致すると、エピソード記憶の再生率が高くなります。
記憶力の低下を少しでも遅らせるには、感情を伴う手がかりや、その繰り返しをすることが大切なのです。
愛した香水は、CHANEL N°5
女性らしさを極めた、すべてのN°5の原点。時代を超越した香り
CHANEL N°5
祖母は、いつもお出かけにこの香りを身に着けていました。
この香水は、祖母にとっての楽しい思い出と紐づいています。
孫の私にとっても、CHANEL N°5は祖母の思い出がたくさん詰まった香水です。
大切な思い出であるCHANEL N°5ですが、高価すぎてプレゼントすることはできませんでした。
これまでは、メモリーブックに
お出かけの様子とCHANEL N°5の写真を載せて、読み聞かせをすることで
繰り返し思い出してもらっていました。
メモリーブックより抜粋
しかし、この度、母の知人の方から、眠っていたCHANEL N°5の小瓶を譲っていただきました✨
未開封でした、感動✨
そこで早速、スカーフにCHANEL N°5を纏わせ香ってもらいました。
香りを嗅いだ瞬間の、これ!という表情!
間違いなく過去を思い出してくれていたと思います。
指さしで、確認!
香りと記憶が結びつくのは、脳のおかげ
神経・生理心理学では、
嗅覚は、大脳辺縁系と言われる扁桃体や、間脳の視床下部、前頭葉の眼窩前頭皮質へ直接伝達され
結びつく感情や記憶を思い出させやすいと言われています👃
扁桃体は、情動の生起や記憶に、視床下部は感覚神経を大脳皮質へ感覚情報を伝え
眼窩前頭皮質は、思考や推論などの高次認知処理を効率的に行い、感情を制御します。
扁桃体とその横の海馬は記憶に重要な領域とされ、扁桃体と海馬は連携して働くことが電気生理実験によって示されています。
祖母が大好きなおしゃれ
年を重ねても、記憶力が低下したとしても、その人らしさは失われません。
祖母は、ヘアーカットもしてもらい
祖母が選んだ赤いリップクリーム口紅をつけ
鏡をみて髪を梳かし
そしてスカーフに香水をつけて
今日、目の前でとても嬉しそうに微笑んでくれました♥
その人らしさをサポートする
モンテッソーリケアでは、こういった心理学の手法を応用してサポートを行っています。
今回ご紹介した、条件づけやプライミングは、非宣言的記憶に分類されます。
次回のブログで「手続き記憶」と一緒に、非宣言的記憶について、詳しくお伝えしていきたいと思います。
この度の祖母の動画はインスタのリールに上げましたので、ご興味ある方はぜひご覧ください☺
ステキな事例を嬉しく拝見しました♪
香を感じられたお祖母様の驚きと嬉しそうな感じが伝わって、周りのみんなも幸せな気持ちになれますね
香りの効果の学問的な裏付けもされて、
流石です
コメントありがとうございます。
思い出の香りがこんなにも豊かな表情をもたらしてくれるとは、私自身も驚きと喜びでいっぱいです!
日常に学びが生きた瞬間でした。
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