今回と次回のテーマは、最近の話題となっているニュースや映画などをとりあげつつ、「多様性(Diversity)」をテーマにお話ししていきたいと考えています。
【日本における”多様性“に一石が投じられた】
ryuchellさんとpecoさんの離婚のニュースが世間を大きく騒がせていますね。
ryuchellさんの言葉の中には、
”父親であることには心の底から誇りに思えるのに、自分で自分を縛り付けてしまったせいで、”夫”であることには、つらさを感じてしまうようになりました。(以下中略)それから2人で今後についてよく話し合い、これからは”夫”と”妻”ではなく、人生のパートナーそしてかけがえのない息子の親として、家族で人生を過ごしていこうね。という形になりました。”
https://www.instagram.com/p/ChroQDard2a/?igshid=YmMyMTA2M2Y=
とあります。このニュースを受けて、世間では色々な意見が噴出していますが、私個人としては、家族として人生の中で、大切な価値観を話し合われた結果として、前向きな決断であったと思います。
ここで、少し述べておきたいことは、”性の多様性”と”性役割行動”についてです。
性を構成する要素には、4種類あります。
- 生物学的性(Sex):
「からだ」の性。身体的な特徴や染色体などより客観的に判断されるものです。
外性器で判断される場合が多いですが、染色体のや内性器など身体的なの性の違いは、目に見えるものだけではありません。 - 社会的性(Gender)
「らしさ」の性。社会の中で、行動様式や性格は影響され獲得されます。 - 性的指向(Sexual Orientation)
「好き」の性。
恋愛感情や情緒的・性的な関心がどの性別に向かっているかを示すものです。 - 性自認(Gender Identity)
「こころ」の性。自分自身が認識している性別のことです。
身体の性と一致せず、自分自身の身体に違和感を持っている方もいます。 - 性役割行動
青年期以降は自ら社会的に期待された性の「役割」を取り入れていくことです。
性役割にとらわれすぎると、生きづらさを感じることもあるとされています。
今回のryuchellさんの言葉に対して、良くも悪くも、多種多様な反応があったことは、これからの日本人の性の多様性や、家族としての性役割行動を見直していく、一つのターニングポイントになるのではないか、と期待しています。
【社会の中で、”多様性”を支えるもの(公平)】
本日考えていきたいことは性に限らず、人の「多様性」について、そしてその中でも「公平」の定義についてです。
多様性と聞いて、どういったイメージを持たれますか?
思いつく限りでも、国籍/年齢/障がいの有無/価値観/言語/民族/文化/人種/社会的地位/経済的地位/性的指向/性自認/キャリア/働き方など様々なジャンルに渡ります。
多様性の尊重される社会のために、何が達成されると良いでしょうか。
犠牲?受容?包摂?参加?公平?(Sacrifice/Acceptance/Inclusion/Participation/Equity)
こうやって、英語がずらっと並ぶのには訳がありまして、これらの学びは、私がオーストラリアのコミュニティサービスの学科でManage and promote diversityの授業から得たものだからです。
ですので、日本語訳すると聞き慣れないものもあるかもしれません。
(次回は、Coda あいのうたとエール!という映画を元に、犠牲と参加についてもお話したいと思います。)
私には、これらの英単語の中で違和感を持った単語がひとつありました。
それが、Equityです。調べてみると、日本語訳では「公平」
どうやら私は、これまで、「公平」と「平等」を混同していたようです。
ちなみに、「平等」の英語訳は、Equalityです。
「公」という字は、ものの見方や扱い方などが偏らず正しいことを指します。
では、平等との違いは何でしょう?
個人の違いは視野に入れず、すべての人に同じものを与えることを【平等(Equality)】
個人の違いを視野に入れて、目的を達成するために適切なものをそれぞれ与えることを【公平(Equity)】
言葉ではわかりにくいかと思いますので、図をご参照ください。
平等【Equality】のイラストでは、同じサポート(木箱1つづつ)がなされていますが、個人差がある、この状況下では、サポートの量や種類が適切か疑問が残ります。
公平【Equity】のイラストでは、その人その人の違いにあったサポート(図では木箱の数やスロープで表現)で、皆が試合を見ることができています。
このように、その人にとって必要なサポートが何かを知るには、まず「個人の違いを把握し、受け入れる」ことが大前提であり
それにより「公平」は保たれます
【違いを受け入れるときに必要なもの】
ここで、この違いを受け入れる(受容 Acceptance)ことを、勇気を持って世間に表明されたのが、ryuchellさんのパートナーである、pecoさんです。
一般的に、性役割が人生の決断に影響を及ぼすことは、女性が多いと言われています。
研究では、有職主婦と専業主婦を比較した結果、専業主婦は特に「日常生活への否定感情」が多く、これは、生きがいの欠如につながると考えられています。
主婦という違和感(西村,2001)
ryuchellさんは、
メディアで自分のこれまでの生き方や、”夫”としての生き方についてお話させていただく機会が増えていく中で、”本当の自分”と、”本当の自分を隠すryuchell”との間に、少しづつ溝ができてしまいました。
https://www.instagram.com/p/ChroQDard2a/?igshid=YmMyMTA2M2Y=
つまり、生きがいをもたらす、「仕事」の中で、違和感を大きくしていった、と書かれています。
ご本人の中でしか、わかり得ないことではあるでしょうが、この溝に対する違和感は、社会生活を営む上で、無意識に抑圧がかかり、生きづらさにつながることが多いでしょうし、本当の気持ちを打ち明けることができる人がryuchellさんの側にいてくれて、本当に良かったと思います。
そして打ち明けられたpecoさんにとっては、お子さんの存在が決断に大きな影響を与えたと思われます。
今後も考えるべきことは、都度台頭してくるでしょうが、新しい家族の形を創って、皆さんが幸せであることを願ってやみません。
pecoさんと、ryuchellさんは、各々の価値観について話し合われ、それぞれの身に着けてこられたスキルに対する、誇りを持てたからこその決断であったと推測します。
【誰かの居場所をなること(包摂)】
その人の価値観を知る為には、当事者であるその人自身の声を聴くことが大切です。
当事者の意見を聞き、問題の本質を多角的に分析し、社会から孤立した人々がもう一度社会参加できるよう、制度や環境を整えること、これを社会的包摂(social inclusion)と呼びます。
この社会的包摂は、ソーシャルインクルージョンとして、SDGsでも取り上げられています。私なりに考え、わかりやすく言うと、この誰かの居場所をなることが、「社会的包摂」につながるのでは?と考えています。
誰かを助けることは、自分自身の誇りとなり、誰かの居場所を作ることは、ひいては、自分の居場所を作ることにもつながるからです。
社会に属している限り、人は良くも悪くも影響を受けます。ですが、私たちは、自分で自分の価値観を決めて良いと思います。
多様性(diversity)いう言葉は、あまりにも広くイメージや実感が伴いにくい側面もありますが、だからこそ、自分の価値観が反映できる”余白”が残されている、ともとることができると思います。
【誰もが誇りを持てる社会に】
私は、いくつになっても、性の多様性が当たり前に社会に認められ、生きやすい社会を願う、支援者 アライ(ally)の一員であると自認しています。
LGBTQ
※性的指向と性自認の概念を含めた、SOGI(Sexual Orientation & Gender Identity)という、セクシュアリティ全般を表す表現が国際的にも用いられるようになってきています。
そのため、株式会社 おひさまのロゴマークは、虹色(rainbow)レインボーがバックカラーになっています。
長くなりましたがここまで読んでいただいてありがとうございました。
最後に、授業のノートの端に書かれていた、包摂(Inclusion)の定義を紹介したいと思います。
Inclusion-Everyone can come in the community and each of them do not need to change their own colors.
包摂ーすべての人が、コミュニティに入ることができ、それぞれの人たちは彼らの持つ色をかえる必要がない。
“余白”の部分に、どんなあなたの持つ”色”(価値観)を入れるかは、あなた次第だよ、と言われているように感じます。