自分とは誰か?
自分とは
日常生活の中で、自分について考えることは少ないと思います。
それは、日常の忙しさで考えている暇なんてない!から、とも言えます。
心理学の研究でも、人は意外に自分のことについて考えていないという研究結果がでています。
自己への注目をどの程度行っているか
107名の就労者に対し、「呼び出し装置」を使用し、実験者からランダムに7~9回/日呼び出して、そのタイミングで就労者に対して、自分が何を考えていたかを質問する。
自己についての意識は中位で8.7%程度、その他、上位は、仕事、時間、家事雑用、何も考えていないという結果になった。
Csikszentmihalyi & Figurski(1982年)
なぜ自分について考えることが少ないのか?
それは、自己について意識が向いている状態は、不快感情が伴うからです。
自分と向き合わねばならない状況、就職活動での自己分析など想像しやすいと思います。
自分に注意が向いている状態では、現実の自分と理想の自分の差、が認識されやすくなるのです。
理想の自分とは
理想の自分を掲げるためには、自分について知る必要があります。
例えば、のんびり・ほがらか・明るくて・おしゃべり好きな私と、
せっかち・強情・冷静で・もの静かな私、自分自身にはどれも備わっているように思います。
- これらのような、自分自身の性格や能力、身体的特徴を自己概念と呼び、
- 自己概念は、自分自身についての意識や、記憶、感情や価値観によっても構成されます。
どんな状況で、だれと居るかで、これらの性格や能力を使い分けています。
認知症では、その自己を構成する概念が、脳の細胞が死滅したり、大脳が萎縮するために、
認知機能の障害が起こることで、これまで培ってきた、知的能力や生活史が失われていき、
喪失感を感じ、不安が増大します。
すると、自己否定的な感情が高まり、自己概念の障害をきたしやすくなります。
自分らしさとは
しかし、その人自身が変わってしまったわけではありません。
- 前頭側頭型認知症のように、感情の抑制を司る前頭葉が萎縮することで、感情を制御する仕組みが働かず、人格・性格が極端に変わってしまう症状が出現する方もいます。
- 脳血管性認知症のように、脳卒中を繰り返す度に、階段状に悪くなり、記憶力が大幅に低下する一方で、理解力や判断力が保持されるといった症状に偏りが見られる方もいます。※脳のどの部位が障害されるかで、異なります。
このように、認知症といっても、分類があり、一人ひとり経過も障害される部位も治療法も異なります。
しかし、一度、認知症と診断されると、ネガティブなイメージが先行してしまいます。
実際に、できなくなることがたくさんあります。
ですが、私の経験から、寛容さ、笑顔、心配り、誠実さ、といった、その人らしさは残ります。
自分らしさをサポートするには
人それぞれの歩まれてきた背景や性格、能力、長所、興味は十人十色です。
強みに働きかけることができると、自己効力感を高めることも可能です。(強みに働きかけること、は次回のテーマです)
- 自己効力感とは、ある行動を起こす前に自分にはこのようなことができるのだという考えです。
- 自己効力感が高い人は、自己肯定意識が強いとされています。
認知力の低下を自覚し、理想の自分自身から徐々に離れ、不安が表出している時こそ、病気や社会的なラベルに隠れてしまった、その人は誰なのか?ということを意識して関わることが大切です。
そして、自分を含めて、社会の一員であり、自もまた、歳を重ねることを自覚する。
目の前にいるその方は、未来の自分自身を映し出す、鏡のような役割を果たしてくれているのかもしれません。